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No.115 「書類申請のみで1キロワット免許を取得した話」
自分の無線機を持たなくても変更申請であこがれの1kW(キロワット)の免許をもらえるというエコライフ(省資源)な体験を披露します。当コラムNo.111 「6人による無線設備共用1kW開局のてん末」で、無線設備共用による免許取得について詳しく書きましたが、今回はその後日談としてまとめました。
1kWの免許を得るには第1級アマチュア無線技士(1アマ)あるいは外国無線従事者免許(米国アマチュア・エクストラ級など)の資格が必要なのは言うまでもありませんが、せっかく1アマの資格を所持していても住宅密集地などで電波障害の不安から1kWの壁を感じている方に今回の話は朗報です。それは無線設備の持ち主である免許人(仮に"親局"と呼ぶ)から「無線設備共用の同意」を取り付けて、書類審査のみで1kWの免許がもらえる旨い話で、クラブ局と友人がその体験をしましたので紹介しておきます。
無線設備共用は何局でも
総務省関東総合通信局(以下、総通)によりますと、親局の「アマチュア無線局設備共用同意書」があると無線設備共用による申請は何局でも申請が可能ということです。ことさら珍しい申請方法ではないようですが、多くの企業系ハムクラブのメンバーが、この方式で500W〜1kWの免許を得ていると聞きました。
申請料は?
JA1ZNG(QTCジャパンハムクラブ)とJA1CVF(岡田さん)は、それぞれ技術基準適合証明取得機種(技適)の1200MHz FM1Wハンディー・トランシーバで移動しない局(固定局)を申請しました。1Wで申請しても免許状の表示は10Wになりますが、それはともかくとして50W以下の固定局の申請手数料は電子申請で2,900円、(紙の)通常申請で4,300円です。1,400円も安くなる電子申請がお得です。固定局の免許を取得したら次は1kWの変更申請を行います。変更申請の手数料は無料ですから、これが一番費用の掛らない方法になります。1W FM固定局がなぜHF帯1kWに変更できるのか、キツネに化かされたような印象かもしれませんが、これらは全く合法的な手続きで問題になりません。
6免許人が設備共用で同時に落成検査を受けた時は、検査を国が直接行うため一人ひとり1,941円 の印紙で検査料を納めた落成届を提出しました。金額の内訳は基本7800/6=1,300円、変更装置1台3,850/6=641円となり、その合計が1,941円でした。これには最初にそれぞれが技術適合証明で50W以上の固定免許を申請したときの手数料(5,500円)が含まれていないので、合計すると一人当たり7,441円となりました。
今回の検査を受けない1kW変更申請(書類申請のみ)では先に述べたように変更申請は無料ですから最初の50W以下の開局に必要な手数料の2,900円のみで済みました。なお、新規に1kWを申請した場合、別途登録免許税が発生します。そのためいきなり1kWを開局申請(3万円超)する人はいません。
変更申請に必要な書類は?
JA1ZNGとJA1CVFは、先に「固定」局を開設済みとして、すでに1kWの免許を受けている"設備共用"の"書類申請"による(検査を受けない)変更申請なので、
1.無線局変更申請書
2.変更事項書/工事設計書
3.アマチュア無線局設備共用同意書
4.免許状返送用の切手を貼った封筒(A5サイズ)
アマチュア無線局無線設備共用同意書
1〜4の書類を用意します。そのほかは必要ありませんが、申請がスムーズに進む書類として開設済みの固定局の免許状、従事者免許のコピー、親局が免許申請で使用した送信機系統図、事前点検表、電波防護のための見取り図があると書類のチェックが早くなります。係官が電子データから検索して探し出す手間が省けるので喜ばれました。
申請から免許状の受領までの日数
書類に不備が無ければ新しい免許状が1〜2週間で届きます。1kWの免許状が届いたら、古い免許状は総通に返納しておきます。免許の有効期間は親局とは異なり、1200MHzの固定局で免許された同じ日付が書いてありました。
その他、必要なノウハウ
個人の設備を個人または社団が共用することはできますが、社団の局を別の社団に設備共用するのは許されません。移動局から固定局に変更するのはめんどうな上に理由書等を必要とします。たとえハンディー機であっても、固定局(移動しない局)で開局しておきます。親局が複数の無線機を持っている場合、その第1送信設備だけを設備共用することも可能ですし、技適で申請した設備をそのまま第1送信設備として据え置いて、親局の第1送信設備を自分の第2送信設備として設備共用することも可能です。
親局が1kWの免許があると知っている人が、アマチュア局無線設備共用同意書を勝手に作成して出そうとしても(有印私文書偽造)必要な免許番号等の情報は本人しか知り得ない情報なので、適当なことを書くと総通でわかりますので要注意です。検査を受けた人と、書類審査のみの人の決定的な違いは[無線局検査結果通知書]が交付されたかどうかにあります。検査を受けないで1kWの免許状を得た人には、この通知書が交付されません。通知書には、識別信号(コールサイン)、免許番号、検査年月日、検査職員の所属、官職氏名、そして検査の判定(合格又は不合格)などが記載されています。
1kWクラブ局の構成員は1アマだけ
社団の場合、構成員を全員第1級アマチュア無線技士(同等)にしないといけないと言われました。実際に検査を受ける場合は、検査官の権限・判断で許可されることもあるようですが、たとえばリニアアンプの電源ラインに鍵を設けることや、構成員名簿に条件を設けて200W以下の設備の操作に限ると明記する方法がありました。
しかし、実際の検査を省略された書類審査のみの変更申請による1kWの免許では通らない方法でした。「鍵と明記」は東京・世田谷のクラブ局JA1ZNG(当時、モービルハム無線クラブ)の500W落成検査(KENWOOD TS-430S+コリンズ・リニアアンプ30L-1)では有効な方法でしたが、今回は書類審査と言うこともあり許可されませんでした。
無線設備共用のQ&A
設備共用した無線機を取り替えたり、一部変更したりする場合、 共用している免許人全員が同時に変更申請を行わなければいけないのか?以下にまとめました。
Q:親局が設備共用している装置を入れ替えた場合、子局の変更申請が必要ですか?。
A:設備共用の全員が変更申請しなければなりません。
Q:親局が設備共用の無線機を撤去した(売却もしくは破棄により無線機が無くなった)場合は、どうしますか?
A:無線機が無くなったら、設備共用の全員が変更申請しなければなりません。
Q:親局が設備共用した無線機を工事設計書の記載事項から削除した場合は?
A:設備共用の無線機が存在する場合は変更申請を必要としません。子局が設備共用を許可された時の無線機が存在し、それを使用する限り親局の免許内容が変化しても子局の免許内容に変更は及びません。
Q:親局が免許を失効した場合は?
A:親局の無線機が無くなったとしたら、設備共用の全員が変更申請しなければなりません。ただし設備共用で許可された無線機が存在する限り変更申請の必要がありません。
まとめ
無線設備共用で6人が免許申請して1kWの免許を取得したところで、クラブ局と友人一人の追加申請した経過を書きました。掛った費用は固定局の免許申請手数料だけで済んだことや技適1W FMハンディー機で固定局を申請できたこと、さらには親機を所有するオーナーの設備共用同意書があると何人でも免許の申請ができることなど、体験を通じていろいろなことが分かったのは大きな収穫でした。
QTCジャパンハムクラブJA1ZNG(1kW固定局)
JA1CVF(1kW)岡田さんと自作200Wリニアアンプ
JA1ZNG(上)とJA1CVF(下)の無線局免許状
無線設備を仲間と共用できる無線設備共用を多くの方に勧めたいと思います。平日は自宅のシャック(100〜200W)で運用し、モービル局(50W)で移動運用を楽しみ、週末や休日には電波障害と無縁な山荘のシャックで友人たちと無線運用を分かち合うスタイルが、未来志向の理想的なハムライフを示しているのではないかと思っています。
文中の訂正について
「その他、必要なノウハウ」の部分で
「個人の設備を個人または社団が共用することはできますが、社団の局を個人もしくは別の社団に設備共用するのは許されません。」と記載しておりましたが、社団局同士の設備共用は認められないのが正しく、次のように修正いたしました。
「個人の設備を個人または社団が共用することはできますが、社団の局を別の社団に設備共用するのは許されません。」