5月24日、ルフトハンザLH9937(ANA共同運航便)11時25分、東京・成田空港を離陸してフランクフルト空港を目指しました。今回も南ドイツのフリードリヒスハーフェン空港までは単独行です。10時間30分のフライトは時差ボケ防止に映画を見て過ごしました。ジョン・トラヴォルタ主演のスパイアクション「パリより愛をこめて」87分など6本の映画(注1)を見続けてフランクフルトに16時36分に到着しました。

フランクフルト空港のターミナル1へ移動、4時間待ちでCITYLINE LH394 21時に乗り継ぎ、22時フリードリヒスハーフェン空港に到着しました。ここにはHAM RADIO 2回目の福田さん(JA1IFB)がデュッセルドルフから列車でフリードリヒスハーフェンに先行しておられ、空港にお出迎えの幸運に恵まれました。定刻に遅れること1時間、無事に合流してタクシーでホテル(Hotel Buchhorner Hof)へ。所要10分、15ユーロでした。

HAM RADIO 2010へ

5月25日〜27日、フリードリヒスハーフェンMESSE※で開かれたHAM RADIO 2010の取材にドイツ中央鉄道駅前のバスターミナルからMESSE EXPRESS行きの無料シャトルバスに乗って15分で会場に着きました。バスの中はヨーロッパ各国から集まったアマチュアの言語が飛び交っていました。Press/Mediaセンターに立ち寄り、事前にネットで登録した取材証と資料等を受け取り会場に向かいました。因みに取材証の交付は媒体に掲載した直近のレポートの提出が義務付けられています。

※見本市

HAM RADIOはDARC(ドイツ・アマチュアラジオ・クラブ)主催の「ヨーロッパNo.1」を標榜するビッグイベントでドイツ(DARC)を筆頭にRSGB(英国)、REF(仏国)、ARI (イタリア)、CARA (クロアチア)、ZRS(スロベニア)、URE(スペイン)、QARS(カタール)、TRAC(トルコ)、ARRL(米国)など、アマチュア団体のブースが並んでいて見どころの一つになっています。お目当てのメーカー、アクセサリ、ハムショップを加えると185のブースになります。入場料は当日8ユーロ、3日間15ユーロ、ほかに学生、シニア、身障者、12〜18歳の割引があります。

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HAM RADIO 2010のシール

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MESSEフリードリヒスハーフェンの入り口

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ICOMブース IC-9100の展示もありました

DARC創立60周年式典

43,000人の会員を擁するDARCはこのほど創立60周年を迎えました。25日午前10時、メッセの2階「オーストリア講堂」に招待客約200名で一杯になりました。フリードリヒスハーフェン市の代表、DARC幹部の祝辞が続き、DARC代表者から、『第35回目世界アマチュア無線愛好家の集いをボーデン湖畔で開催できて喜ばしい。インターネット通信が急速に普及した現況を見据えて、アマチュア無線は原点に立ち戻り、無線技術を大切にしながら無線交信にいそしみ、夢多きアマチュア無線家達が連携して発展に努力しよう』との挨拶がありました。式場ロビーにはIARU会長VE6SH、同副会長LA2RRが談笑しておられたのでご挨拶して式典会場に入場しました。

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MESSEの上空にツェッペリン飛行船(DARCのQSLカード)

HAM RADIOの会場“メッセ”

A1ホール:HAM RADIOとHAMtronic(エレクトロニクス、ハード&ソフトウエア、アクセサリ)、クラブ・各種団体など。A2ホール:DARC 60周年展示。

A3-A5ホール:フレアマーケット(のみの市)。オープンエアグランド:ハムキャンプ

A1、A3、A4、A5ホールのスペースは29,000(平方メートル)の広さがあり、全体にゆったり構成されていますが、土曜日は行き交うのが難しいほど多くの入場者で混雑しました。閉幕後の7月1日、DARCから29カ国、16,800人の入場数が発表されました。

トピックス

ドイツのHF/VHF帯トランシーバーHilberling PT-8000が再登場しました。200Wモデルが13,290ユーロ+税19%、日本円で160万円、発売は10月とのこと。イタリーのSPE EXPERT2K-FAリニアアンプ、スロバキアのOM Pewer OM3500Aリニアアンプなどが珍しく感じました。ほかに子どもたちを対象にした「自作体験コーナー」はベテラン指導員のもとに半田ごてを握り電子機器を製作する様子が印象的でDARCの青少年育成に注ぐパワーを感じました。

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DARCの自作体験コーナー

ヨーロピアン・バルーン・プロジェクトは2つの気象バルーンにラジオ送信機とカメラを搭載して打ち上げました。ローカルクラブとポーランドチームが参加、バルーンにはディジタルデータセンサーとボイスインフォメーションを送信する意欲的なプロジェクトでした。展示で目に着いたのは大電力対応のマグネチック・アンテナでしたし、変形八木アンテナなど意欲的なアンテナの製品展示が目立ちました。軽いアンテナポールを何種類か見かけので、ヨーロッパは移動運用がお好きのように見受けました。

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ハイパワー用マグネチック・ループアンテナ

ドイツの免許取得

JAIG会員(#493)の筆者は、ミュンヘンの壱岐さん(DF2CW/JA7HM)にフリードリヒスハーフェンに行くとメールすると、『短期(7日間)の免許申請をしませんか?』と免許取得のお勧めがありました。さっそく日本の無線従事者免許証と無線局免許状をPDF(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)に変換してメール添付で送るとフリードリヒスハーフェンのホテルに届くように手配すると連絡がありました。

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ドイツの免許証(DL/JA1FUY) (※クリックすると画像が拡大します。)

HAM RADIOの会場で壱岐さんから免許証の入った封筒を受け取りました。今回から代理申請が認められなくなったので本人が当局に出頭して署名する必要があると言われ、壱岐さんに伴われてとあるブースに出向いて書類を提出。有効期間は6月24日から7月1日までの1週間、コールサインはDL/JA1FUY Aクラスのライセンス。手数料は無料。AクラスはHF帯(135.1kHz,1.8MHz,10MHzを除く)で750Wの電力が認められています。免許を戴いたら交信しなくてはということで、日本から持参の100mW出力のハンディーの電源スイッチをオン、144.575MHz FMでDL/JA1FUYのコールサインでDF2CWと交信しました。交信距離は約3メートル、それでも交信できた喜びは格別です。

アイボールQSO

会場入り口でアラビアのローレンス風な衣装をまとったカタール国(QATAR)のA71Aのご一行に出会いました。衣装が珍しいので撮影を申し出て快諾 ! A71CTの名刺をいただき後刻、QARS(カタール・アマチュアラジオ・ソサエティ)のブースを訪ねると、帽子をプレゼントされました。

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A71A  QARSカタールのQSLカード

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カタールのブースでいただいた帽子

続いて訪ねたのがDL8MGフレッドさんのブース。前を通りかかると小型送受信機、バッテリなどを詰め込んだアルミケースに見入っていると、『いいだろう?これは2010年モデルだ』『このアルバムをみてよ、毎年、移動用の無線機器をオールインワンで運用できるセットを作って10年、全部取ってあるよ』と写真を見せてくれました。シンプルなトランシーバーにアンテナチューナー、機種は古いが確かに決まっていました。

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DL8MGご自慢のオールインワン無線機

Press/MediaセンターでDJ4UF モルトリヒトさんにお会いしました。同席の福田さんはQTC-Japanの[Overseas News] (2008年9月26日)で先生の人となりを紹介していますので記事の話で盛り上がりました。最近、電子技術専門学校を退官されてHF帯CWとVHF帯の流星散乱通信に力を入れています。1958年ドイツ北部のハンブルグで開局、アマチュア無線歴50年を数えました。ドイツのアーヘンに住み、冬季は温暖なスペイン・バルセロナで流星散乱通信を運用する傍らアマチュア無線の解説書の執筆や青少年の育成に熱心です。夫人はDH1KYL。DJ4UFのHPはこちら http://www.dj4uf.de/

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EA5/DJ4UFのQSLカード

28日午前、すべての予定をこなしてフリードリヒスハーフェン空港へ向かう道すがら、DORNIER博物館に立ち寄りました。旧ドイツの爆撃機や人工衛星などを見学した後、飛行場の芝生をながめ風に吹かれてのんびり昼食をとり、フリードリヒスハーフェン空港へ向かいました。フランクフルト行きLH395に搭乗、席につくと前の席の紳士が名刺を差し出し握手を求めてきました。帽子に貼り付けたARRL/VEC VE(ボランティア試験官)のパッチ(patch=当て布)を見たのでしょうか。名刺にはJay Bellows、K0QB ARRL副会長・国際事務担当とあり、QST5月号のOfficersで見た記憶が蘇りました。こちらからNV1Jの名刺を渡してもう一度がっちり握手、 思わぬ出会いに恵まれました。

おわりに

メッセに2日間通い、3日目はボーデン湖をフェリーで対岸のロマンスホルン(Romanshorn)に渡りました。所要時間40分、往復15ユーロ。ロマンスホルンはスイス連邦なのに国境検問がなくドイツの続きのような印象です。街を散策してテラスが似合うレストランでランチして束の間の観光気分に浸りました。通貨はスイスフランなのに、ユーロ紙幣での支払いに応じてくれました。8年ぶりのHAM RADIOは新しくなった会場とフレンドリーなDARCの要人とJAIGの仲間に迎えられて居心地のよい5日間を過ごすことができました。フランクフルトからLH9936(ANA共同運航便)の真新しい機体B777-300に乗り、翌29日午後3時に成田へ戻ってきました。

(注1)6本の映画:ジョン・トラヴォルタ主演のスパイアクション「パリより愛をこめて」87分、アカデミー賞・受賞の「ハート・ロッカー」125分、ミュージカル「シカゴ」113分、天才数学者の半生を描いた「ビューティフル・マインド」120分、プロの運び屋が決死のチェイスを展開「トランスポーター」93分、最愛の娘を奪還できるか「96時間」93分、上映時間の合計10時間31分。