Onlineとーきんぐ
No.121 「モービルシャックはしっかりした電源ラインづくりから」
車を替えると新しいシャックづくりに期待が弾む反面、電源ラインをどのように引くか、アンテナと基台選びはどうする?などモービルシャックの完成に至る道のりは楽しくもあり苦労が伴うものです。今回はNISSANのニュー・スカイライン250GTに搭載する無線機をICOM のHFオールバンド+50MHz+144MHz+430MHz (SSB/CW/RTTY/AM/FM) IC-7000Mトランシーバー(50W)に決めてシャックづくりに取り組みました。
車が届くと真っ先にボンネットを開けてバッテリー周辺の隙間と電源ラインをどの辺りに通して室内に入れるかを調べました。バッテリーの周りにはヒューズ付き配電盤とフィルターを配置したいという思惑がありましたが、全くと言っていいほどそのスペースがなくて驚くばかりです。あらためてエンジン・ルームを俯瞰すると密集度が高く隙間を見出すのは不可能、電源ケーブルを通す穴も見つけられません。
さてどうする?
2級自動車整備士の資格を持つ友人に電源ケーブルの車内への引き込みについて相談すると「隔壁が2重なのでケーブルを通す難易度が高い」と判定、「ディーラーに作業を依頼するのが一番」「ついでにマフラーのボンディング※をお願いしては?」とアドバイスされました。昭和39年(1964年)、三菱コルト600から始まったモービルシャックづくりの自信はどこかへ飛んで行き、スカイライン250GTで初めてお手上げになり、ディーラーに電源ケーブルの配線とアース・ボンディングを依頼することになりました。
※電磁エネルギーを迂回、遮蔽、抑止する構造一般を意味します。
マフラーの網線を使ってボンディング
2本のマフラーにそれぞれボンディングした
電源ケーブルの配線
安定したモービル運用は電源ラインをしっかり構築することに尽きます。さっそく電源ケーブルの線材を集めるため近くのオートバックスに行き、エーモン工業の「大容量電源取り出しコード」DC12V 480W以下、AV5.00sq×6m、スローブロヒューズ(40A)付、赤色コード(2,710円)とアースコード(670円)を見つけました。これに手持ちの網線2本をマフラーのアース・ボンディング用として添えてディーラーに渡しました。作業終了後、バッテリー周りをのぞくと車内に通じる配線に添わせて電源ケーブルを室内に通してあり、マフラー2本のボンディングもきれいに決まっていました。バッテリーを外し、さらに囲いも外すプロらしい仕事で工賃は2,500円、マフラーのアース・ボンディングが2,500円でした。
バッテリーと囲いを外して赤黒のDCケーブルを車内へ。
バッテリーを装着。スローブロヒューズ(40A)が手前に見える。
配電盤とフィルター
配電盤とフィルターは助手席の下のスペースにアドニスのPower Distributor PD-30(10,290円)とオルタネーター・ノイズ・フィルター30A(7,665円)を設置しました。PD-30は連続許容電流30Aまで対応する配電盤で、エンジン・キーと連動・非連動それぞれ3台ずつ電源を供給することができます。サイズは突起部含まず55(H)×196(W)×82(D)mm、約500g。PD-30のACC端子へは、運転席の足元にあるヒューズボックスに「ミニ平型ヒューズ電源5A」エンジン・キーONで+12Vの箇所に挿入してあり、これに連動して配電盤の出力電圧が(12V)がIC-7000Mに供給されます。エンジン・キーをOFFにすると出力電力は強制的にゼロになり、バッテリー上がりを防ぐ仕組みです。
MFL-30Dはオルタネーター・ノイズの軽減が期待して配電盤の前に挿入しました。定格電圧:DC12〜24V±10% 定格電流:30A(瞬間最大35A) フィルター:不平衡型チョーク方式 入力端子台:丸型圧着端子3.5-4用 サイズは突起部含まず81(H)×100(W)×82(D)mm、約730g。
アドニスのPower Distributor PD-30(右)とオルタネーター・ノイズ・フィルター30A(左)
トランシーバーの電源ケーブルを引く
IC-7000Mの前面パネルをセンターコンソールに取り付け、本体をトランク・ルームに設置するため、付属のDC電源ケーブル(OPC-1457)をトランク・ルームまで引きます。同時に別売のセパレートケーブル(3.5mタイプのOPC-1443、4,200円)、430/1200MHz FMトランシーバーの電源ケーブルとセパレートケーブル、外部スピーカー・ケーブルを後部座席の下を通してトランク・ルームへ配線しました。
後部シートを外す
シートの2か所にフックを外す紐が出ているので、これを探して引っ張るとシートを取り外すことができます。次に背もたれの上部にあるフックを持ち上げて外します。これでトランク・ルームの隔壁がむき出しになりますので、電源ケーブル等にスパイラルチューブ(内径φ10.2ミリ、最大結束線径φ30ミリ)を巻きつけて配線をまとめ、併せて外皮を保護した後、隔壁の穴を通してトランク・ルームへ、さらに内張りの裏側を通して無線機の設置場所に立ちあげておきます。
後部座席を外して電源ライン、セパレートケーブルを通している
トランク・ルームの隔壁の穴を利用してケーブルを通す
トランシーバーの固定方法
IC-7000Mの本体とアンテナ・チューナー AT-180、それに430/1200MHz機の本体をダイソーで見つけた「便利バンド」(雑誌や荷物、スポーツ用品などを結束するバンド、2本入り100円)で3段に重ねて締めつけると、良い具合に締りびくとも動きません。これを無線機のサイズに合わせたプラスチックの浅いカゴ(100円)に入れるとフィットしました。このままでは内張りの上を滑るのでカゴと内張りの間に10cm×10cmのワンタッチテープ(100円)を2枚貼り付けてカゴを固定しました。無線機を3段に重ねて発熱を心配しましたが、一回の送信時間が短い運用スタイルから放熱の面で支障はないと判断しています。
トランク・ルームに設置した(下から)AT-180、IC-7000M本体、430/1200MHz機本体。
通信用モービル・スピーカー
トランク・ルームに無線機本体を配置したことによりスピーカーを運転席付近まで引いてこなくてはなりません。そこでDIAMONDの通信用モービル・スピーカー P610(2,310円)2個を購入しました。スピーカーの直径57mm/8Ω、最大入力5W、サイズ75(W)×69(H)×31(D)mm、約125g、3m(φ3.5プラグ付)がその仕様です。残念ながら全長3mではトランクから運転席まで届かないため、サンコー電商の「スピーカー延長コード」(3m、プラグ径3.5mm)570円を2本購入。430/1200MHz機のスピーカーをセンターコンソールの左側面に、IC-7000Mのスピーカーを同右側面の目立たないところに両面接着テープで装着しました。実際に聴いた音質は明瞭度が高く満足しています。
ついでに車内のあちらこちらにスピーカーをおいて聴いてみましたが、車内はスピーカーボックスの中のようなものでどこにおいてもよく聞こえました。なお、IC-7000Mは前面パネルの右側面にヘッドホン/外部スピーカーを接続する端子があり、CWの運用時にヘッドホンが使えて便利です。もちろん外部スピーカーを挿してもかまわないので、無線機本体からスピーカー・ケーブルを引いて来なくても済みます。因みにアイコムには別売品のモービル用外部スピーカーSP-10(5,040円)が用意されています。
おわりに
今回は電源ケーブルとセパレートケーブルの引きまわしについて述べましたが、電源ケーブルは短絡事故を皆無にするためヒューズの挿入と十分に太いケーブルの使用と安全な配線が欠かせないと強調しておきます。次回はアンテナ基台の装着と同軸ケーブルの引きまわし、アンテナの調整、IC-7000Mの前面パネルの装着などについて述べる予定です。