Onlineとーきんぐ
No.124 「TELEX H-341ヘッドセットでハンズフリー」
散歩コースに中古のパソコンや楽器、カメラなどを扱う"ハードオフ"があり、時々その店に立ち寄ってジャンク漁りを楽しんでいます。いつものようにその店に入り何気なくジャンク箱をのぞくと、懐かしいブランドのヘッドセットを見つけました。
昭和40年(1965)〜50年(1975)、ラジオ雑誌の広告でよく見かけたTELEXです。飛行機のパイロットが使っている明瞭度の高いイヤホンやヘッドセットを発売している有名ブランドです。アマチュアの世界では、その後、広告を見かけることなく忘れていたあのTELEXのヘッドセットがジャンク箱の中に埋もれていたのですから驚きました。
ビニール袋のヘッドセットを手に取って見ると300円の値札が貼ってあり、未使用のTELEXヘッドセットH-341が確認できました。どこかのパソコンの付属品として同梱されていたものが、使われないままハードオフに流れてきたものと思われます。用途はパソコン通信用でYahoo®メッセンジャーやSkype™の通話に使われるもので高価なものではありません。ヘッドホンはダイナミックの片耳、マイクはエレクトレット・コンデンサタイプ、ヘッドホンとマイク端子は2本の3.5ミリ・ミニジャックです。
TELEX H-341ヘッドセット
H-341はどんなヘッドセット?
H-341には雑音取り消しサーキット(ノイズキャンセリング)※がありました。電車や飛行機など騒音の多い中で周りのノイズを消して音楽などを明瞭に聴くことができます。携帯型デジタル音楽プレイヤーにノイズキャンセル付きヘッドホンを使うと飛行機のエンジン音などがキャンセルされて音楽のみがクリアに聴こえると評判の高い機能です。これは思わぬ掘り出し物に出会ったものです。
※ノイズキャンセリング:マイクで拾った騒音とは逆の位相の音波成分を発生させて互いを消し合い、その場で必要のない音(ノイズ)を低減させるもの。
H-341はパソコンのサウンドカードにつないでSkype™等の通話に使いますが、ヘッドバンドがしなやかで締めつけがソフトなタッチのヘッドセットはHFバンドのトランシーバーと組み合わせてコンテストなど長時間の運用に適していると思われます。さらにH-341は片耳タイプなので周りから声を掛けられても聴き逃すことがありません。
日頃は、通信用ヘッドセットの名機Heilsound® プロセット-4を愛用していますが、ヘッドバンドを調整しても長い時間装着していると耳の圧迫感がどうしても気になります。その点、H-341は全体に軽く、ヘッドバンドのソフトな感触から双方を比較すると装着感の点でH-341に軍配を上げたくなります。
PTT回路とマイクアンプ
H-341に全く手を加えずにHFオールバンド+50MHz(SSB/CW/RTTY/PSK31/AM/FM)100W トランシーバーIC-7600に接続できるように、PTT回路とマイクアンプをひとつにしたアダプターを作りました。基本回路はOnlineとーきんぐNo.3「ハンズフリー装置の試み」とほぼ同じ回路で、パーツの点数も少なく簡単に作れます。
マイクアンプとIC-7600マイクコネクタ接続図(※クリックすると画像が拡大します。)
マイクアンプはFCZ研究所の#094A(250円、送料150円)を用い、これにメカニカルなスイッチを組み合わせました。マイクアンプは一時生産を終了して手に入らなかった時期がありますが、その後、大阪のキャリブレーションにより復刻され東京・秋葉原の千石電子(http://www.sengoku.co.jp/)等で購入できるようになりました。他にアンプ基板を収めるプラスチックのケース、スイッチ類を揃えて構想に1日、組立作業に2時間、思い通りのアダプターが完成しました。
FCZマイクアンプ#094A
ハンズフリーの勧め
アダプターはTELEX H-341以外にでも、パソコン用のヘッドセットならほとんどの製品が使えます。購入する際にヘッドを押さえる部分がソフトタッチで頭をあまり締め付けないタイプがよいでしょう。マイクコネクタの接続はIC-7600に合わせてあるので、他の無線機の場合は回路をよく調べて配線してください。アイコムのトランシーバーはマイク端子に+8Vの電源とボリウム連動型のAF出力が出ているので、+8VはマイクアンプとH-341ヘッドセットの電源として利用し、AF出力はそのままヘッドホンに接続しました。
IC-7600にアダプタを接続して使っている様子。H-341(中央)、その右はTELEXのヘッドホン
ヘッドセットを使う機会が多いのはフォーンのコンテストの時ですからハンズフリーにするために、アダプターにPTTの外部端子にRCAレセプタクルを用意して、ここに足踏みスイッチを取り付けました。工業用ミシンの足踏みスイッチが手に入りやすいと思いますが、今回はハードオフで見つけた米国製のTrREALITE2という型名の電子楽器等に使う中古の足踏みスイッチ(500円)を見つけて利用しています。写真で見るように未使用に近い良品でコンパクトなサイズが気に入っています。
電子楽器用の足踏みスイッチ
黄色のスイッチはPTTで押すと送信になります。赤色のスイッチはロック付きでラグチューの時に使います。コンテストに参加している時に知り合いが聞こえたら、そのままラグチューすることもありますのでロック付きのPTTスイッチを別に用意しました。跳ね上がり型スイッチならいっそう使いやすくなります。短い送信はPTTの跳ね戻り側で行い、ラグチューになったらロックが効く側に倒します。連続送信禁止回路を設けていないのでPTTの操作に一定の注意が必要です。
まとめ
マイクアンプは小型のプラスチック・ケースに組み込みましたが、送信電力が1kWの運用でも回り込みも無く快適に動作しています。ノイズキャンセリング機能は期待通りの効果を発揮して大きな声を張り上げなくても応答率が良かったように思います。パソコン用の簡易な構造のため軽量で装着しているのを忘れるほど快適なオペレーションができました。
パソコン用のヘッドセットは値段が安いので一度試してみる価値があると思われます。TELEX H-341を見つけた機会に通信用としてコンテストなどで実用してみて使いやすさを実感しました。なお、IC-7600に装着した場合、マイクアンプのボリウムを最小に絞ってちょうどよかったことを付け加えておきます。
H-341を装着して運用中のJF1GUQ
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