エレクトロニクス工作室
No.86 SDR-1
1.はじめに
No.63,64で紹介した「おじさん工房」(http://ojisankoubou.web.fc2.com/)のAPB-1は大変素晴らしいキットでした。そこで、今度は写真1のようなソフトウェアラジオのSDR-1を作ってみました。WEBから問い合わせてみて下さい。
写真1. このようなソフトウェアラジオです。
ソフトで動くラジオは他にもキットがありますし、CQ誌にも基板付きの付録がありました。ほとんどがパソコンに接続して、DLしたソフトで復調するというものです。ところが、このキットはパソコンを用いずに、基板上のAVRを使って復調を行うという優れものです。AFアンプの386とソフトによるボリュームもありますので、電源とスピーカだけ用意すればOKというラジオです。もちろん、パソコンを使うか否は一長一短ではありますが、このようなスタンドアローンでの動作ができると、私などはこのまま受信機に応用できないか・・と思ってしまいます。
このまま作っただけでは単なる中波ラジオになってしまいますが、これを基に考えるキッカケになれば素晴らしい製作になります。
2.このキットについて
FLL(フレケンシー・ロックド・ループ)によって受信する4倍の周波数を発振させ、これを基に90度位相差のある受信周波数を作ります。そしてHC4053でMIXする事で、IとQの信号を取り出します。それぞれA/D変換してAVRで絶対値計算処理後にD/A変換し、386でスピーカを鳴らすというラジオです。
キットのAVRにはソフトが書き込まれたものが入っていますので、書き込み環境を気にする必要はありません。なお、ソフトはWEB上で公開されており、修正したり応用する事が可能です。もちろん、相当の知識が必要になりますので、私にはできません。
このまま作ると中波ラジオですが、FLLの周波数を変える事によって、40kHzや短波ラジオにもなりそうです。これも先の実験にはなるのでしょう。
3.作成
写真2がこのキットに梱包された部品になります。チップのCR類の他に普通のケミコンも入っています。APB-1ほどではありませんが、フラットパッケージのICもあります。それなりに気合を入れて作りましょう。説明書は上記WEBからダウンロードしますが、とても丁寧に作られています。これだけのキットですが、途中で迷うような部分は全くありませんでした。
写真2. 部品は袋に分けられています。チップ部品も安心です。
写真3は基板が完成し、スピーカを仮接続して動作を試しているところです。AMラジオも受信できると嬉しいものです。ちなみにバーアンテナではありませんので、何mかのアンテナを接続する必要があります。写真4はこの時のLCD表示の様子です。
写真3. 基板のままスピーカを接続し、動作チェックをしています。
写真4. LCD表示の様子です。
このままで動作しますが、いくら何でも基板とスピーカが転がっているだけではサマになりません。そこで実験がしやすいように、アルミ板上に固定する事にしました。写真5がアルミ板をカットして穴あけをしたところです。この上に基板とスピーカを載せて、一応ラジオとしては完成としました。もちろん、いろいろと試したい事はこれからです。なお、スピーカは鈴商で購入した400円のモービル用を使っています。最近はこのような小型スピーカボックスが少なくて困ります。
写真5. 基板の固定用にアルミ板をカットしました。スピーカは両面テープで固定しますので、ネジ穴はありません。
4.使用感
私の住む那須塩原市は、実はAMラジオの聞こえ難い地域です。まともに聞こえるのは栃木放送が発射する那須送信所だけで、NHKや在京民放はギリギリのレベルです。普通の6石ラジオや車のカーステレオでそのような状態ですが、このSDR-1で試してみました。1mにも満たないクリップ付きのワイヤーをアンテナにしただけですが、他のラジオと何ら変わりなく栃木放送だけは良く聞こえ、NHKも何とかギリギリという感じでした。
あるWEBで「6kHzの音が聞こえる」と書いてありました。それ程耳障りな感じではありませんが、確かに高音が入ります。これは変換する周波数を、キャリアの6kHz上か下にしているのためのようです。ノッチフィルターが付いていますので、ONして6kHzをヌルするようにします。
単なるラジオとしてみてしまうと、ボリュームのフィーリングなどで完成度はまだまだかもしれません。ボタンでUP/DOWNするのですが、思ったようなイメージで絞れません。ツマミの付いた10kボリュームを使う事もできるようになっていますので、問題は全くありません。それでも、やはりここではボタンを使いたくなります。
周波数は1プッシュ1ステップで可変します。このステップは1kHz、5kHz、9kHzから選択できます。大きく動かそうとすると、思わずSW1を長押ししてしまいます。すると、長押しはメモリーモードという事になってしまい、戻らないといけません。慣れだけなのですが、結構迷うところがありました。
5.終わりに
トランジスタラジオの代わりと考える方には、コストの点で薦められるものではありません。しかし、ソフトウェアラジオの勉強をしたい、作ってみたい、と思った時の第一歩としてちょうど良いでしょう。
パソコンに接続して復調させる場合の端子なども、豊富に揃えられています。想像される事は全て可能なのでは、と思える位の発展性がありそうです。このような発展性のあるラジオも面白いです。