エレクトロニクス工作室
No.139 80mマイクロFOX
1.はじめに
昨年JARL栃木県支部が行うハムの集いに出席し、ARDFは受信機も送信機も国産製品がない事を知りました。そこで「研究」の一つとして製作講習会に参加し、No.136の中国製受信機キットなども作りました。次は完全自作でARDF用の受信機を作らねば、と考えています。
トランシーバなどでは受信側から作るのが一般的ですが、まずは送信側の発振器から作る事にしました。この場合は送信側と言うよりもマーカのようなものですので、発振器の実験という意味も含めています。このようにして、写真1のような「マイクロFOX」を作ってみました。最近はFOXと呼ばないようですが、あまり気にしない事にします。なお、この先にはIDも出せる「ミニFOX」も考えています。そのため、ここでは「マイクロFOX」としています。
写真1 このようなキツネの尻尾付きのマイクロFOXです。
2.回路
3.5MHzの発振回路を考えた時、LCでは安定度に問題がありそうです。といっても水晶を特注するのは、コストも時間もかかります。そこで写真2のような、3.58MHzのセラミック発振子を使ったVXOを試してみました。3端子ではなく2端子のもので、品名としてはMURATAの「CSA3.58MG」のようです。これ以外でも周波数が同じであれば使用できると思います。但し、LとCの値を調整する必要があるかもしれません。
写真2 3.58MHzのセラミック発振子です。
試験方法としてはNo.118のクリスタルチェッカで発振させ、LとCの最適値を予め把握しました。いつもは必ずバラック回路での実験を行うのですが、これが省略できました。その結果、回路は図1のようになりました。このLとCの値は発振子によって最適値が異なりますので、調整がありそうな場合は外しやすいようにハンダ付けしておくと良いでしょう。一応の感触としては、3.50MHz位までなら簡単に下げられそうです。セラミック発振子の回路は、扱いやすいように思います。
図1 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)
バッファを付けていませんので、キツネの尻尾(つまりアンテナ)の位置で周波数が多少は動きます。それでもARDF用受信機のテストが目的ですので、これで十分です。もちろん、3.52MHzなどのクリスタルがあれば、その方が周波数はずっと安定します。
3.作成
FCZ基板を使う事として、写真3のように部品を集めました。電源は9Vの006Pを使い、そのホルダーも用意しています。
写真3 まず集めた部品です。
いつもは実装図を作るのですが、この位の回路なら「必要なし」と作っていません。まあ、悪く言えば「行き当たりばったり」という事になります。写真4がFCZ基板に回路を組んだところですので、実装図の代わりに参考にして下さい。ここで9Vを加えて動作をチェックします。問題が無ければ、作った基板を生基板上に固定します。FCZ基板は構造上生基板に乗せると、間にキャパシタンスができます。従って必ず周波数が変化しますので、再度調整を行います。
写真4 FCZ基板に組み立てて、生基板上にまとめようとしているところです。
次に、写真5のように006Pホルダーも固定しました。もしARDF用受信機をお持ちでしたら、発振周波数どおりに受信できる事を確認してみて下さい。部屋の中でも場所を移動しながら受信できます。
写真5 このようにまとめてみました。
何かシャレたアクセントと思い、昨年北海道ハムフェアに行った時にキツネの尻尾のキーホルダーを探してみました。しかし、これが見つからずに諦めていたのですが、写真6のようなキーホルダーをダイソーで見つけました。これでキツネに尻尾が付きました。キツネというよりタヌキにも見えますが、これで良い事にします。
写真6 ダイソーで見つけた「キツネの尻尾?」です。
4.調整
周波数の調整しかありません。周波数カウンタを用いて周波数を測り、トリマーを回して3.52MHzに合わせます。この周波数でARDFが行われるためですが、もちろん他の周波数でも構いません。周波数が合わせられない場合は、セラミック発振子とシリースのLとCの値を調整して下さい。下げられない時にはLを大きく、下がり過ぎたり不安定になる場合はLを小さくします。微調整程度はCでもできますが、下げられる幅には限度があります。
後から気が付いたのですが、トリマーをスイッチかジャンパーピンで切り替えて、3.57MHzも発振できるようにする方法もあるでしょう。始めたばかりですので、後から気が付くアイデアも多いようです。
5.使用感
実はNo.136のR3500Dより前に作ってありました。製作した講習会の会場にも持ち込んでいます。この受信機の調整や、同じような受信機の実験に随分と使ってみました。マーカとして受信機の調整に十分に役立っています。ただ、出力が小さいため、屋外で本格的に方向探索をするという実験はできません。もう少しパワーを出し、アンテナを付けないといけないようです。つまり送信機というカテゴリーになり、本格的なID付きにしなければなりません。
6.終わりに
これだけでは発振器の実験ですが、ARDFを行う方には便利なツールになると思います。トランシーバにダミーを付けてテストするのも臨時的には良いのですが、自作好きとしては今一つの方法です。このようなツールを作っておくと良いでしょう。