1.はじめに

普段はQRPの自作が中心なのですが、IC-7300Sでは10W、50MHzでは20W「も」出すことができます。自作を志すものとしては、このクラスのパワー計も作っておかなくてはなりません。そこでこのようなパワー計の調整のために、その前の段階として写真1のようなアッテネータを作っておく事にしました。もちろん、IC-7300Sには1%ステップで出力を調整する機能があります。一般的にはこの機能を使えば事足りるのですが、それで済まないところが私の面倒くさい性格という事です。
 

写真1 このような3台のアッテネータです。


このような目的のアッテネータであれば、それ程の減衰量は必要ありません。1、2、3dBがあれば十分と思います。組み合わせる事で1~6dBを1dBステップでテストできます。但し、この場合のアッテネータは耐電力が必要になります。もちろん1、2、4dBの方が効率的という考えもありますが、3dBはスタンダードな値ですので意図的に残しました。

2.アッテネータの計算

このようなアッテネータの計算を行うツールをエクセルで作ってみました。以前No.24とNo.25や、CQ誌の記事でも使った事があります。今回は更にバージョンアップしました。ここに置いておきますので、使ってみて下さい。黄色のセルに数字を入れる事で計算を行います。黄色以外のセルには数式が入っていますので、壊さないようにして下さい。アッテネータの計算としては、ネットで検索すると便利なものが沢山見つかります。それでも良いのですが、実際に作る事を前提として+αを加えています。

まず、アッテネータを作ろうとすると、当然なのですが中途半端な抵抗値しか出てきません。しかし、実際に我々が簡単に入手できるのはE12系列で、せいぜいE24系列までが一般的なのでしょう。従ってこの値の抵抗を使うしかありません。そこで、この少しズレた抵抗を使った場合に、どのような減衰量になるのか。また、どのような入出力インピーダンスになるのかを計算し、その時のSWRとリターンロスの計算をしています。各抵抗値を調整し、希望する特性に近づける事を目的にしています。例えば、普通は左右対称の値にしますが、これを片方だけ少し変えるような荒業も試せます。もちろん、抵抗のような部品には必ず誤差がありますので、その誤差を考慮に入れた計算もできる事になります。正確なデジタルテスターで測った結果で計算する事もできます。

更に、今回は各抵抗で消費する電力を計算しないと部品の購入ができません。20Wを入力するとして、全て20Wの抵抗を使うような事はしません。高周波的にはなるべく小型の抵抗の方が特性的には有利ですし、ケースのサイズの問題もあります。そこで各々の消費電力の計算も入れています。また、負荷側をオープンにしたとか、0Ωにしたとかの指定をするようにしていますので、いろいろなケースでの消費電力が試せます。入出力の抵抗値は指定できますが、jXについての指定はできません。なお、入力側は0Ωでの記入はできるのですが、入力電力の定義が良く解らなくなってしまいます。一応75Ω等でも使えますので固定にはしていません。出力側をオープンで使ってしまった場合や、ショートで使ってしまった場合でも計算可能ですので便利です。

私が趣味で作ったエクセルですので、間違いがないとは言えません。計算結果に責任は負えませんので予めご了承願います。それよりも間違いの部分があれば、こそっと教えて下さい。

なお、アッテネータにはπ型とT型があり、基本的にはどちらでも同じです。しかし、T型の場合は入出力間を2つの抵抗で結ぶ必要があります。入出力間に距離が必要になりますので、高周波的な工作を考えるとπ型の方が構造的に有利になります。そのため、T型については少々手を抜いています。

このようにして、1dBアッテネータは図1-1のような計算結果になりました。そして使う抵抗値はE24系列までを使って決め、そのSWRとリターンロスの計算結果が図1-2です。この計算は出力側に理想の50Ωを付けた時の入力側のSWRとリターンロスです。逆も同じです。図1-1のRinとRoutを参照しているだけです。W数については図1-3に示します。とりあえず20Wの50Ωで入出力した場合の計算結果でW数を決めていますので、条件によっては耐電力が不足する場合もあります。特に出力側でオープンとかショートにした場合、極端に消費電力が変わりますので注意が必要です。同様に2dBについては図2-1~2-3のように、3dBについては図3-1~3-3のようになりました。
 

図1-1 1dBでの計算結果です。
 

図1-2 選んだ抵抗でのSWRとリターンロスの計算結果です。
 

図1-3 20Wの50Ωで入力し、出力を50Ωで受けた場合の各抵抗の消費電力です。

図2-1 2dBでの計算結果です。
 

図2-2 選んだ抵抗でのSWRとリターンロスの計算結果です。
 

図2-3 20Wの50Ωで入力し、出力を50Ωで受けた場合の各抵抗の消費電力です。
 

図3-1 3dBでの計算結果です。
 

図3-2 選んだ抵抗でのSWRとリターンロスの計算結果です。
 

図3-3 20Wの50Ωで入力し、出力を50Ωで受けた場合の各抵抗の消費電力です。

3.回路

エクセルで計算をした前述の結果ですが、まとめると表1のようになります。実際に入手可能な抵抗値を使って、計算しました。今回は個別に購入しますので、E24系列でも全く気にせずに使っています。この値が最良とは思っていません。もっと上手い組み合わせがあれば、それで良いと思います。20Wで計算していますので、表1では最大で5Wの抵抗が必要となっています。金属皮膜の抵抗を探すと容易に入手できるのは5Wまでのようで、一部は耐電力がギリギリですが仕方なしとしました。前述のとおり、インピーダンスが合わないとオーバーする可能性があります。いずれにしても、20Wでの連続使用は避けるべきでしょう。
 

表1 使う抵抗とW数をまとめました。

4.作製

回路は簡単ですが、作り方が問題になります。高い周波数でもなるべく特性が低化しないように配慮しなくてはなりません。もちろん5Wの金属皮膜抵抗を使っているのですから、それなりに大型のサイズになります。もちろん特性的には限度がありますが、それは仕方ありません。これらの抵抗は千石電商で個別に探して購入したものです。普段はあまり行わないような部品探しだったため、少々手間取りました。

回路の実験は不要のため、今回はケースを先に加工しました。ケースにはタカチ電機工業のYM-65を使用し、入出力にはBNCコネクタを使いました。写真2のようなBNC-Jコネクタを使う場合、普段はケースの内側から取り付けています。しかし、これとペアになる写真3のBNC-Pコネクタでは構造的に無理です。そこでバランスを取って、どちらもケースの外側から取り付けるようにしました。どちらのコネクタも普及品です。普通BNCコネクタは4GHzまでと言われていますが、とても使用できないと思われます。BNC-Pコネクタは秋月電子にて150円で購入しました。「角座付き」とか呼ばれる少々特殊なコネクタになります。せいぜい50MHzまでと考えていますので、超普及品ですが充分でしょう。BNC-Jもジャンクの普及品です。Mコネクタよりも良いと思います。
 

写真2 使用したBNC-Jです。
 

写真3 使用したBNC-Pです。
 

また、ケースであるYM-65の下側がコネクタの取り付けネジと接触してしまいます。一部分をカットする必要があります。3台の加工をしたところが写真4になります。この穴あけは写真5のように、下側のケースを支えとして行いました。上側だけよりもずっと安定します。YM-65は2.5mmネジを使った小型のアルミケースです。このような自作にはちょうど良いサイズと思います。今回は3台使用したのですが、1つだけネジのピッチが合っていない感触のケースがありました。4か所共に強引にネジを入れた感じなので間違いはないと思います。新旧が混ざった3台ですので、仕様が変わっているのかもしれません。
 

写真4 ケースの加工を3台行ったところです。
 

写真5 このように下側のケースを使うと、作業が安定します。
 

BNCコネクタにネジ止めしたアースラグに、カットした生基板をハンダ付けします。この生基板に抵抗のアース側をハンダ付けしています。写真6がハンダ付けの準備をしたところです。抵抗を写真7のように間違いの無いように整理します。今回は抵抗値の他にW数もありますので注意します。1dBが写真8になります。2dBが写真9に3dBが写真10になります。1dBではケースが大き過ぎるのですが、他と合わせる事にしました。まあ理想的とはなりませんが、50MHz帯程度であれば何とか性能は出ると思います。特性を優先するのであれば、小型のケースが有利になります。今回は、このようにケースの上側に部品を取り付けています。下側が蓋という構造になりました。
 

写真6 カットした生基板を置いて、ハンダ付けするところです。
 

写真7 W数の間違いをしないように整理します。
 

写真8 1dBの内部になります。ちょっとケースが大き過ぎです。


写真9 2dBの内部になります。ケースがちょうど良いサイズになります。
 

写真10 3dBの内部になります。

5.測定

使う前に特性を測定し、その結果を反映させて使うのが良いと思います。そこで、周波数特性を0~100MHzで測ってみました。これは測定結果1~3になります。これで普通は充分と思いますが、せっかくですので入力を50Ωで終端した場合の、出力側のリターンロスを0~600MHzで測ってみました。これが測定結果4~6になります。一応50MHz程度であれば充分な特性と思います。さすがにこのような作り方では500MHzでは全く通用しない事が良く解ります。まあ、どちらの方向で測定しても同じように良くないと思います。反対の方向では余分な変換コネクタが必要になるため、誤差になりますので測っていません。
 

測定結果1 1dBの減衰量の周波数特性です。(0~100MHz)
 

測定結果2 2dBの減衰量の周波数特性です。(0~100MHz)
 

測定結果3 3dBの減衰量の周波数特性です。(0~100MHz)
 

測定結果4 1dBの入力側を終端した場合の出力側のリターンロスです。(0~600MHz)
 

測定結果5 2dBの入力側を終端した場合の出力側のリターンロスです。(0~600MHz)
 

測定結果6 3dBの入力側を終端した場合の出力側のリターンロスです。(0~600MHz)
 

1~3dBと組み合わせた場合の計算をしたのが表2です。測定結果1~3を反映させたバージョンも作っておくと良いでしょう。20Wや10Wを入力して減衰させた出力になります。キリの良い位置にはなりませんが、メータ全体の動作確認には不自由しないと思います。
 

表2 1~3dBを使った場合の入出力の電力を計算してみました。

このようなアッテネータは入力側と出力側が決まってしまいます。もちろん超QRPなら気にする事はありませんが、逆方向に20Wも入れれば危険である事は常識でしょう。そのため、測定した結果と共に、入出力を明確にするシールをテプラで作って貼っています。このように写真11~13のようにして完成としました。

写真11 1dBです。このように表示しました。
 

写真12 2dBです。このように表示しました。
 

写真13 3dBです。このように表示しました。

6.使用感

これで、パワー計の校正が可能になりました。このようなアッテネータがあると、他の測定や実験にも便利になるはずです。パワー計の紹介も計画していますが、実際にはパワー計を先に作り始めました。途中でアッテネータが無いと・・と考え直し、最終的には平行して工作をしたのが現状です。

エクセルの計算シートは、50Ωと75Ω変換PADの計算も行う事ができます。もちろん普通はアッテネータとは呼びませんが応用する事ができます。