エレクトロニクス工作室
No.46 AFアンプ
1.はじめに
これまで、AFつまり低周波関係の工作もたくさん作成しました。AFレベルメータをNo.41で作成したため、次はDDSを使ったAFの発振器を考えていました。ところが計画しているうちに、その前にアンプを作っておこうと路線変更しました。という事で、基本的にはAFレベルメータや、この後で作成するDDS発振器と同じ回路のAFアンプを紹介します。
マイクアンプ等のAFアンプを作る場合、実際どの程度のゲインを目標にすれば良いのか、手探りの場合があります。あるいは面倒な事なしに、早速実験をしてみたい場合もあります。そのような時にさっと使えるように、ゲイン可変の写真1のようなアンプです。
写真1. このような実験用のアンプです。
2.回路
最近ではトラ技でもこのような回路の基板が付録として付く時代になってしまいました。私の場合もあまりオペアンプは得意ではありません。基本的な回路ですので面白みもないでしょうし、ツールとしても極めて地味な部類に入るでしょう。しかし試してみると、結構面白いものです。また、便利に使えそうです。
図1が回路になります。オペアンプを使った何の変哲も無い回路となっています。電源は単電源とし、簡単に使えるように006Pを使用しています。回路はオペアンプを2段使用し、初段ではあまりゲインを稼がず、ゲインの調整用とし、2段目で主に増幅しています。入力には600Ωのアッテネータを使用し、0〜20dBを1dBステップで切り替えます。ここにアッテネータを使ったため、オペアンプの入力は600Ωで終端しました。また、オペアンプの出力にも600Ωを入れ、インピーダンスは入出力共に600Ωとしています。
図1. アンプの全回路になります。(※クリックすると画像が拡大します。)
アンプのゲインは2段目で抵抗を切り替えて、0,20,40dBとしています。その前にアッテネータがありますので、トータルとしては-20〜40dBの幅でゲインを1dBステップで可変できる事になります。ふと思ったのですが、0dBのレンジは結果的にアッテネータにしかならないので、不要だったかなと・・。20,40,60dBの設定とすれば0〜60dBのアンプとなりますので、その方が使いやすいでしょう。但し、60dBのアンプは、初段で20dB程度を稼いでおかないと困難でしょう。
3.作成
特段今までと違った作り方はしていません。写真2のように、小型のジャノメ基板を作成しました。半田面は写真3のようになります。
写真2. ジャノメ基板を使って基板を作成したところです。
写真3. 半田付け面です。
ケースはリードのPS-1を使用しました。小型のケースで、この位の回路でしたらちょうど良い大きさです。写真4が穴あけの準備をしているところです。鉛筆書きで位置を書いていますが、これは予めメンディングテープを貼っています。また、1mmのドリル刃で最初の穴を開けていますが、ポンチなしでも滑る事はありません。写真5が穴あけが終わったところです。
写真4. ケースの設計中です。
写真5. 穴アケをしたところです。
アッテネータにはAFレベルメータでも使いましたが、東京光音社製のT20KS 600ΩT型 K-112仕様を用いています。20dBの1dBステップですが、600ΩT型のアッテネータであれば使用可能です。ステップは味付けの問題になるので、必ずしも20dBや1dBステップである必要はありません。しかし、ちょうど良い程度であると思います。この回路のままではT型やπ型のアッテネータは使えますが、H型は平衡なので使えません。減衰量が合わなくなりますので、注意して下さい。このあたりの事については、東京光音社のHPを読んで確認して下さい。
基板をケースに収めたところが写真6になります。入出力にはクリップを用いています。現実的にはこの方がずっと使いやすくなります。ターミナルでは接続が困難になってしまいます。電池は006Pをホルダーごとケースの裏面に付けてしまいました。
写真6. 基板をケース内に入れた様子です。
4.測定
一応測定器というほどのものではありませんが、一応測定用ツールですので特性を測定してみました。測定結果1〜3は100Hz〜100kHzの周波数で、それぞれのゲインで測定しました。アッテネータの周波数特性と誤差はこのレベルの作品に対しては『ない』と断言できますので、0で設定として測定しています。このように、20dBまでは良いのですが、40dBのレンジでは周波数が上がるにつれてゲインが下がってしまいます。これは、使ったオペアンプNJM4558のGB積が3MHz程度のためです。データシートどおりの特性といえるでしょう。汎用のポピュラーなICを使ったのですが、初段に20dBのゲインを持たせる事で改善は可能です。実際には5〜6kHzもあれば充分なので、あまり気にしない事にしました。ただ、測定器と考えると、100kHzまでフラットで伸ばしたくはなります。
測定結果1. アッテネータを0dBとしてゲインを0dBに設定した100kHzまでの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果2. ゲインを20dBに設定した100kHzまでの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果3.ゲインを40dBに設定した場合は、ダラ下がりになってしまいます。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果4〜6は同様に10kHzまでを測定したものです。このように、10kHzまでならそれ程ひどい特性ではありません。
測定結果4. ゲインを0dBに設定した10kHzまでの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果5. ゲインを20dBに設定した10kHzまでの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)
測定結果6. ゲインを40dBに設定した10kHzまでの特性です。普通に使う範囲ではそれ程のダラ下がりにはなりません。(※クリックすると画像が拡大します。)
なお、もうひとつ制限があり、出力レベルは5dBm以上で歪んでしまいます。これは電源に9Vを使っているため、ピークtoピークで9V以上の波形が出せるはずがありません。実際にはこれよりも低くなりますので、大体5dBm以上で苦しくなるかと思われます。
なお、これらの測定は、No.19で紹介した、FRMS-AFで行っています。しかし、FRMS-AFの出力は既に0dBm近くありますので、このアンプとしては飽和状態で測定できません。そこで、図2の回路で50dBの固定アッテネータを作りました。写真7のようなものです。これは測定結果7のような53dBという特性になりました。後から熱収縮チューブで写真8のように仕上げています。特性を測定しているの様子が写真9です。
図2. このような実験用のアンプです。
写真7. 600Ωのアッテネータをツールとして作ってみました。
写真8. 熱収縮チューブを被せておきました。
写真9. アッテネータの特性を測っているところです。
測定結果7. 50dBのアッテネータの特性ですが、53dBとなりました。(※クリックすると画像が拡大します。)
5.おわりに
極めて地味なツールのAFアンプですが、オペアンプの基本を学ぶ事ができます。私もFRMSでの測定で、こんなに教科書どおりにゲインが下がるという事を始めて知りました。何でもやってみる事は大事です。
このアンプを使って、次の実験に役立てたいと思います。早速、次回のAF用DDS発振器に応用する事となっています。