1.はじめに

 No.41でAFのレベルメータを作成しました。レベルメータがあると、今度は正しい周波数とレベルを出力するオシレータが作りたくなります。これが「測定も趣味」という事なのでしょう。

 No.23でもAFの発振器を紹介しています。簡単で良いのですが、思ったようなステップの周波数では出力できないという欠点がありました。そこで、DDSキットを用い、周波数を10Hzステップで可変できるようにし、出力レベルもオペアンプとアッテネータで可変できるようにした、写真1のようなAFオシレータです。出力インピーダンスも600Ωとし、10Hz〜99.99kHzをカバーしますので、ハムの使うAF実験用の発振器として充分かと思います。

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写真1. このようなAF発振器です。

2.回路

 図1に回路を示します。基本的にはNo.20のDDSのVFOと何ら変わりません。秋月電子のDDSキットを用い、周波数をAFに特化して出力にオペアンプを使っています。制御はAVRの2313を使っています。

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図1. 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

 DDSの出力には8MHzのLPFがありますが、意味がないので使いません。また、元々の回路ではD/Aコンバータと2SK125の間が0.1μFですが、これでは低い周波数で出力が低下してしまいます。そこで、ここは47μFとしています。これで10Hz程度から出力できるようにしました。DDSの後には600Ωのアッテネータが接続されるため、インピーダンスを600Ωに合わせるようにしています。DDS出力の部分の回路は、図2のようにLPFをパスするように抵抗を取り付けています。

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図2. DDSの出力はこのように改造しました。(※クリックすると画像が拡大します。)

 アッテネータには1dBステップを使用し、アンプゲインの可変と合わせて、出力のレベル調整が楽にできる様にしています。使用したアッテネータはNo.4146で紹介したAFレベルメータに使ったものと同じ東京光音製のT20KS 600ΩT型K-112仕様です。詳細は東京光音社のHPを御覧下さい。ツマミの工作をしていますので、過去の記事も参考にして下さい。

 出力のアンプは10dBステップでゲインを可変するアンプで、2段としています。LM358のオペアンプを使用し、入出力インピーダンスは600Ωにしています。オシロスコープを使って図3のようにして測定したところ、この回路で出力インピーダンスは570Ωになりました。あまり正確な測定ではありませんが、オシロスコープに表示する電圧がVRの無かったときの1/2に下がるように1kΩのVRを調整します。この時のVRの値をテスターで読むと、出力インピーダンスの値となります。570Ωであれば、ほぼピッタリといえるレベルでしょう。

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図3. 出力インピーダンスの測定はこのように行います。(※クリックすると画像が拡大します。)

3.製作

 ますDDSのキットを作成し、ソフトの開発を行いました。下敷きとなるソフトがパソコンに結構ありますので、動作させるまで時間はかかりませんでした。ソフトは時代に逆行する環境で、全てアセンブラで組んでいます。いつものとおりですが、写真2がソフト開発をしているところです。ただ発振周波数を設定するだけですので、簡単なソフトで済みます。トランシーバを作る場合には周波数の切り替えやRITなどでの周波数のシフトが大変ですが、この場合には単純そのものですから簡単です。

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写真2. DDSのソフトを開発しているところです。

 写真3がジャノメ基板をカットしたところです。この基板にLCDを取り付けて、パネル面にLCDの表示部分を見せるようにしました。ちょっと洒落た感じの作り方をしましたが、逆にちょっとメンテがやり難くくなってしまいました。写真4が部品を取り付けたところです。写真5がその裏面です。この基板に写真6のようにコネクタ付きのワイヤーを取り付けます。そして、両サイドにアルミの三角アングルをカットしたものをネジ止めします。

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写真3. LCDはこのようにジャノメ基板に取り付け、CPUと一緒にしました。ちょっと面倒な工作にしてしまいました。

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写真4. CPUの近辺を作成しているところです。

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写真5. 裏面の様子です。

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写真6. コネクタを取り付けて動作試験です。

 ケースはリードのPS-3を用い、写真7のように穴あけをしました。これに基板をアルミ板で立てて、写真8のような各部のレイアウトを確認しました。これで動作を確認後、ジャノメ基板にアンプ部分を作成し、写真9のような内部となりました。

 なお、ツマミの周辺だけパソコンで作ったシールを貼り付けています。

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写真7. ケースはこのように穴あけしました。

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写真8. 内部のレイアウトはこのようになります。右側のアンプは未作成です、このまま動作確認をします。

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写真9. アンプの部分も作成します。

4.調整

 出力レベルを調整する必要があります。オペアンプの一段目のゲインを調整し0dBmの時に0dBmを出力するようにするだけです。アンプの可変部分はそのままでピッタリ合いましたが、使っている抵抗は±5%ですので、若干の誤差がでる可能性があります。その場合には並列に抵抗を入れて調整して下さい。写真10はNo.41で作ったレベルメータと接続して、出力レベルを測定している様子です。これで充分にレベル確認ができました。

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写真10. 出力をNo.41で作成したレベルメータで確認しているところです。

 結果的にレベルが若干変わっても特に問題になる事はありません。それなりの目盛りに変更すれば良いと思います。この回路で作った場合には、概ねこの値には入る事と思います。

5.終わりに

 やはりレベルメータがあると、発振器も欲しくなりました。今までは出力レベルの解らない発振器を使っていましたが、このような発振器があると実験がとてもやり易くなります。更に実験が楽しくできる事でしょう。

 実際に使ってみると、スピーカから音を出してみても面白いですし、アンプやフィルターの実験にも面白いものです。まさかこの発振器を使って、CWの練習はないとは思いますが・・。