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エレクトロニクス立国の源流を探る


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No.106 電蓄からデジタルオーディオまで 第8回

ターンテーブルの安定した回転を確保する技術開発が進む
レコードプレーヤーの性能を決める要素は、無論カートリッジだけではない。ターンテーブルやトーンアーム、筐体全体の作りなども重要な要素となる。ターンテーブルは、常に安定した回転数を維持しなければならない。そのために、電力会社の供給する交流電源の電源周波数を基準として同期させていた。だが東日本では50Hz、西日本では60Hzとなっており、これを基準に同期モーターで一定回転させると、周波数が異なる地域へ移動する場合に調整する必要があり、不便だった。そこで、モーターサーボ回路やPLLなどのエレクトロニクス技術を使いモーターの回転数を制御するものが開発され、こうした電源周波数問題は解消していった。

さらに、ターンテーブルの回転を安定する方法として、動力源としてのモーターは安定したトルクを発揮すること、回転数を制御しやすいことが重要となる。初期の頃は、コイル型インダクションモーターや、コンデンサー進相型インダクションモーターが使用された。その後、シンクロナスモーターが使われようになっていった。また、モーターの回転力をターンテーブルへ伝える方法も工夫されていった。一般的には、アイドラー方式が採用され普及していった。モーターの軸にプーリーを付け、アイドラーと呼ばれるゴム製の円盤を介して回転を伝える方式。この方式では、モーター軸に段状に直径の違う速度切換え用プーリーを取り付け、アイドラーの接する位置を切換えることで必要な回転数を得ることができる。

アイドラー方式、ベルトドライブ方式が登場
アイドラー方式は、構造が簡単で低コストという優れた特長があり、普及タイプのレコードプレーヤーにマッチしていた。このため多くのステレオに採用された。反面、ゴロと呼ばれる不要な振動を拾ってしまうのが欠点だった。そこで、ゴロを発生させにくい方式としてベルトドライブ方式が登場した。モーター軸にプーリーを取付け、ゴムベルトを介してターンテーブルに回転を伝える方式である。比較的固く、変形しやすいいアイドラーに比べ、弾力のあるゴムベルトで回転を伝えるのでゴロの発生はほとんど無くなる。しかし、回転数の切換えは、段付きプーリーを用いて行うので、やや複雑になることや、ベルトがゴムなので長い間使っているうちにベルトが伸びてしまい回転ムラの原因となるのが欠点だった。

モーターの回転を直接ターンテーブルに伝えるダイレクトドライブ方式が開発される
そこでモーターの回転を直接ターンテーブルに伝えることで、こうした問題を解消しようとするダイレクトドライブ方式が開発されていった。この方式では、モーターの回転を直接ターンテーブルに伝えるのでモーターの回転が安定していることや、起動トルクが大きいことが求められる。ターンテーブル用のモーターにはACモーターとDCモーターの2種類がある。ACモーターはジッタやトルク変動が少ないが起動トルクは小さい。一方、DCモーターは起動トルクが大きいがジッタやトルク変動でやや難があった。

モーターのジッタやトルク変動による回転ムラを減少させるには、ターンテーブルの質量を大きくして慣性力を増せばよい。しかし、質量が大きくなればなるほどモーターのパワーが要求され、構造も重量に耐えるだけの強度が要求されるのでコストアップとなる。業務用やハイアマチュア用のレコードプレーヤーならそれでもいいが、一般ユーザー用の普及機としは高価すぎた。

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松下電器(現パナソニック)のダイレクトドライブ方式ターンテーブル「SP10」(1970年発売)。オーディオの新時代を築いた世界初のダイレクトドライブ方式ターンテーブル。従来のベルトドライブ方式に起因する振動や回転ムラを払拭し、民生機ながら放送局に納入。他機器に多大な影響を与えた。

安価にレコード演奏を楽しめるターンオーバー式が急速に普及
一般ユーザー向け、もしくは小型ステレオ用のレコードプレーヤーとして、クリスタルカートリッジを採用したターンオーバー式のレコードプレーヤーが普及した。LP/EPレコード用の33.1/3回転、45回転、SP用78回転に対応し、ターンテーブルも20cm程度でLPレコードより小さく、軽量だった。EPレコードでは、調度良いサイズだが、LPレコードを再生する時は、当然レコード盤はターンテーブルをはみ出す状態になる。それでも、ラジオのフォノ端子に接続するだけで安価にレコード演奏を楽しむこともできるため急速に普及していった。

このほか、ターンテーブルの回転数が規定の回転数に合っているかどうかを簡単に確認できるよう、ターンテーブル外周に回転数確認用のマークを付け、ストロボで照射することで目視できるレコードプレーヤーも発売された。さらに、レーザー光を利用して再生するレコードプレーヤーも開発された。米国のベンチャー企業が開発したものだが、日本の企業が権利を買い取り実用化した。レーザー光で読み取るため、針を盤面に接触させないので磨耗が無い。このメリットから、放送局や図書館などでは、大切なレコード盤を痛めないので採用するところもあった。

この他、常に安定した性能発揮させるために、重量のある頑丈な筐体にしたり、筐体底面に防振ゴムやバネ機構などを複合したインシュレーターを設置したりするなどの様々な工夫がなされた。これらはスピーカーからの音声がフードバックすることによるハウリングを防止対策としても重要だった。


参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、CEATECジャパン2014、日本レコード協会HP、日本ビクターの60年史、SOUND CREATOR PIONEER、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、東芝HP、東芝科学館ほか


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