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エレクトロニクス立国の源流を探る


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No.108 電蓄からデジタルオーディオまで 第10回

テープレコーダーの実用化が放送からレコード作製現場に大きな影響を与えた
テープレコーダーの実用化、さらにHi-Fi化は、ラジオ放送やレコードの録音にも大きな影響をもたらすことになった。そしてオーディオファンにとってもテープレコーダーを持つことによって、自ら音源を手にする事が出来るようになった。レコードにより音源を与えられる一方通行ではなく、自分で録音して楽しめるようになったことは画期的なことであった。また、レコードの場合は回転数や録音特性など規格に一定の制約がある。テープレコーダーの場合もテープ速度、テープ幅などの規格はあるが、やろうと思えばテープ幅を広くしたり、テープ送りスピードを高速にしたりするなど、よりHi-Fi化へチャレンジすることも容易となる。

オーディオファンに自作する楽しみ方を提供
レコードの録音現場でもテープマスターやマルチチャンネルレコーダーなどを駆使することによってレコーディングの高音質化が進んだ。また、テープレコーダーを持っているオーディオファンを対象に録音会などのイベントが行われるようになっていった。オーディオファン自らが録音することによりソフトを作製することができ、レコードメーカーから一方的に与えられる受身の楽しみ方から、自作する楽しみ方が加わった。

FMステレオ放送の開始でラジオ放送に革命が
一方、ラジオ放送は1957年にNHKがFM放送を開始し音質の良い放送が楽しめるようになった。その後、1963年にはFMステレオ放送がスタートした。NHK以外では1960年から東海大学が民放の実験局としてFM東海の放送を開始した。このころステレオ放送に関する関心は非常に高く、NHKが第一放送と第二放送の2波を使って「立体音楽堂」を放送した。そして、FM放送を普及させるために、ステレオ再生装置を持たない人でも音質の良いFM放送をラジオなどで手軽に楽しめるようにする必要があった。それには、FMステレオ放送とFMモノラル放送を両立させるFM多重放送が不可欠となる。

AM-FM方式が標準方式となり、全国的にFMステレオ放送が始まる
FM多重放送は、FM-FM方式、AM-FM方式があり実験を繰り返し行った結果、1963年にAM-FM方式が標準方式として採用されることなった。標準方式が決まったことによって、1968年にはFMチャンネルプランが決まった。翌1969年には実用化試験局、実験局などNHKのFM局が本放送となり、民放FM局も名古屋に開局した。さらに、翌年には東京、大阪、福岡に相次いで民放FM局が開局した。全国的にFMステレオ放送が行われるようになるとテープレコーダーを持っているオーディオファンはFMステレオ放送を録音するエアーチェックを楽しめるようになった。結果的にこれがテープレコーダーの普及に大いに貢献することになる。

ソニーの"デンスケ"が放送番組の進歩に貢献
また、NHKをはじめ民放各局は、スタジオからの放送だけでなく、街頭へ出て収録した「録音ニュース」を流すようになる。また、リアルタイムの番組から、録音、編集したドラマや特別番組が放送されるようになり放送内容は格段に進歩した。街頭録音番組「録音ニュース」に活躍したのが1951年に発売されたソニーの"デンスケ"「M-1」。まだ動力に適した電池が無い時代で、ゼンマイ式のショルダー型テープレコーダーだった。"デンスケ"の愛称は、当時、毎日新聞に掲載された横山隆一氏の漫画"デンスケ"に登場したことから、この愛称で呼ばれるようになった。

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ソニーの"デンスケ"「M-1」

音質に優れたコンデンサーマイクロホンや、ムービングコイル型ピックアップ(MC型)が普及
一方、1953年に開始されたテレビ放送は、1960年にはカラー放送がスタートし、急速に家庭に普及していった。テレビ放送の音声はFM方式であり音質も良かったことから、マイクロホンも音質に優れたものが開発されていった。これが、FMステレオ放送の音質向上にも貢献することになる。また、FM放送局でもレコードを高音質で再生し放送するために、レコード再生ステレオピックアップの高音質化が必要になった。こうして音質に優れたコンデンサーマイクロホンや、ムービングコイル型ピックアップ(MC型)が次々と開発され普及して行った。

オープンリール方式に代わる小型で扱いやすいテープレコーダーが必要に
高音質なFMステレオ放送が全国的に開始されたことでオーディオマニアの間でエアチェックブームが起きた。しかし、オープンリール方式のテープレコーダーは性能に優れていたものの、取り扱いが不便で、何より大きく重たいのが欠点だった。一方、オーディオマニアは自分のオーディオルームに大きなオープンリール方式のテープレコーダーがデンと構えているのが自慢でもあった。それは、それでオーディオマニアに満足をもたらしてくれる存在には違いないのであるが、もっと大衆層までテープレコーダーを普及させるためには、より小型で扱いやすいテープレコーダーが必要になってきたのである。


参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、日本ビクターの60年史、SOUND CREATOR PIONEER、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、東芝HP、東芝科学館ほか


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